ワインを強く意識したのは、24才の時、学生時代から親しんだ山小屋で。みんなで昼飯にパンを食べた時に一升瓶のワイン(その頃ちょっとしたブームだった)を一本開けたら、半分は女性の6〜7人で、あっという間に空になった。他の酒類ではこれはあり得ない。酒宴にならず、楽しめる酒。食事に溶け込める酒。この時の風景は今も焼き付いている。
広島のメーカーで日本酒やチューハイを手がけながらちょっとメーカー勤めにマンネリを感じていた頃、出張ついでに訪れた北海道・小樽のワインメーカー。「私たちは百姓なんですよ」という社長の言葉が胸に焼き付き、その晩、妻に北海道行きを相談しました。「いいわよ」の一言。わが家の運命が決まった日です。
松原農園のワインは、私のお酒の飲み方がベースにあります。家族と普通に食事をしながら、何でも飲みます。お酒だけのための晩酌は、ほとんどしません。外で飲む事もめったにありません。それだけに、食事のじゃまをせず、脇役として目立ちすぎない、優しい味わいのワインを求めていました。しっかりした個性がありながら、出しゃばらないワインです。
畑仕事は正直辛い事も多いですが、日々結果があらわれてその日の成果に満足すれば、こんなに夕飯がうまい仕事も有りません。なかなか満足のいく百姓にはなれないのですが、出来る事を積み重ねていく、そんな毎日を過ごしていきたいと思っています。
今、自分の工場を持つことが出来て、ワインブームのさなかでこれからの生き方を考えています。できれば、この風土を生かし、新しい造り手の活躍の場を用意する手伝いができたら…と思う毎日です。。